PMBOK第6版とシステム開発工程の関係を理解する③

~【基本設計】成果物・システム開発工程・PMBOKプロセス対応表~


📘 基本設計で作成する成果物一覧

基本設計では、要件定義で整理した業務要件・システム要件をもとに、利用者から見える仕様やシステム全体の構成を具体化します。

主に、画面・帳票・機能・データ・外部インターフェース・インフラ構成などを設計し、詳細設計やコーディングへ引き継ぐための基礎を作ります。

PMBOK第6版では「基本設計」という開発工程自体は定義されていませんが、成果物の作成・品質確保・資源確保などは、主に以下のプロセスと関係します。


📋 基本設計で作成する成果物

ドキュメント(成果物)システム開発工程内容主に関連するPMBOK第6版プロセスプロセス群主な目的
ER図基本設計データ構造とエンティティ間の関係を表現した資料スコープの定義/品質マネジメント/プロジェクト作業の指揮・マネジメント計画・実行データ構造とエンティティ間の関係を論理的に設計する
アプリケーション概要図基本設計システム全体の構成や機能配置を視覚化した資料スコープの定義/プロジェクト作業の指揮・マネジメント計画・実行アプリケーション全体の構成と機能配置を可視化する
外部IFレイアウト一覧表基本設計外部インターフェースのレイアウトやIFを一覧化した資料スコープの定義/要求事項の収集/品質マネジメント/プロジェクト作業の指揮・マネジメント計画・実行外部システムとの連携対象・方式・責任範囲を整理する
帳票一覧基本設計出力する帳票の種類、レイアウト、形式などを整理した資料スコープの定義/要求事項の収集計画・実行作成・出力する帳票の種類と用途を明確にする
帳票仕様書基本設計・詳細設計帳票のデザイン、レイアウト、入出力項目などを詳細に記載した資料プロジェクト作業の指揮・マネジメント/品質マネジメント実行帳票項目・入力規則・処理・表示条件を具体化する
画面遷移図基本設計ユーザーインターフェースにおける画面間の遷移や操作フローを視覚化した資料プロジェクト作業の指揮・マネジメント/品質マネジメント実行画面間の遷移と操作の流れを設計する
画面一覧基本設計システムで使用する画面を一覧化した資料スコープの定義/要求事項の収集計画・実行開発対象となる画面とその役割を一覧化する
画面仕様書基本設計・詳細設計画面のデザイン、レイアウト、入出力項目などを詳細に記載した資料プロジェクト作業の指揮・マネジメント/品質マネジメント実行画面項目・入力規則・処理・表示条件を具体化する
機能一覧要件定義・基本設計システムが提供する主要機能を一覧形式で整理した資料要求事項の収集/スコープの定義計画・実行システムが提供する機能を漏れなく整理する
機能定義/項目編集定義書基本設計オンライン処理・バッチ処理の機能詳細や項目編集ルールを記載した資料スコープの定義/プロジェクト作業の指揮・マネジメント計画・実行各機能の目的・処理概要・入出力・項目編集ルールを定義する
コード定義書基本設計・詳細設計システムで使用するコード体系やコード一覧を整理した資料プロジェクト作業の指揮・マネジメント/品質マネジメント実行業務コードや区分値の体系と意味を定義する
データ定義書基本設計・詳細設計データ項目の意味・型・制約などを説明した資料プロジェクト作業の指揮・マネジメント/品質マネジメント実行基本設計で名称・意味・桁数を定め、詳細設計で型・制約を確定する
サブシステム構成表基本設計システム内のサブシステム構成、役割、相互関係を整理した資料プロジェクト作業の指揮・マネジメント/品質マネジメント実行サブシステムの分割、責任範囲、相互関係を整理する
H/W情報基本設計開発・テスト・本番環境で使用するハードウェア情報アクティビティ資源の見積り/資源の獲得計画・実行必要な機器、配置、性能、冗長構成を定義する
S/W情報基本設計開発・テスト・本番環境で使用するソフトウェア情報アクティビティ資源の見積り/資源の獲得計画・実行OS・ミドルウェア・製品・バージョン構成を定義する
システム設定情報基本設計システム内サブシステムの構成・役割・相互関係。プロジェクト作業の指揮・マネジメント/品質マネジメント実行・監視・コントロールサブシステムの分割、責任範囲、関係を整理する
N/W構成基本設計ネットワーク構成や接続情報を整理した資料アクティビティ資源の見積り/プロジェクト作業の指揮・マネジメント計画・実行ネットワーク機器、接続、セグメント、通信経路を設計する
ライブラリ情報(開発・テスト・本番)基本設計・詳細設計ライブラリ一覧。プロジェクト知識のマネジメント/品質マネジメント実行利用ライブラリの名称・版数・用途・依存関係を管理する
アーキテクチャ基本設計システム全体のアーキテクチャを整理した資料プロジェクト作業の指揮・マネジメント/品質マネジメント実行システム全体の構造、技術方針、主要コンポーネントを設計する
開発環境構築手順基本設計・詳細設計開発環境構築手順。資源の獲得/プロジェクト作業の指揮・マネジメント実行システム全体の構造、技術方針、主要コンポーネントを設計する
アカウント一覧基本設計ユーザーアカウント、権限、利用者などを整理した一覧資源の獲得/資源のコントロール監視・コントロールアカウント、権限、利用者、状態を適切に管理し、本番アカウントをリリース前に確定する

📋 全工程で作成・管理する成果物

ドキュメント(成果物)システム開発工程内容主に関連するPMBOK第6版プロセスプロセス群主な目的
不具合管理表全工程発生した不具合の内容、原因、影響、対応状況、対応履歴を管理する資料品質コントロール/リスクの監視監視・コントロール不具合を一元管理し、品質向上と再発防止を図る
課題管理表全工程プロジェクト課題、担当者、期限、対応状況、解決履歴を管理する資料プロジェクト作業の監視・コントロール/リスクの監視監視・コントロール課題を可視化し、対応漏れや遅延を防止する
進捗管理表全工程WBSやスケジュールを基に進捗率、実績、遅延状況を管理する資料プロジェクト作業の監視・コントロール/スケジュール・コントロール監視・コントロールプロジェクトの進捗を把握し、計画との差異を管理する
WBS(Work Breakdown Structure)全工程作業を階層的に分解した一覧。進捗・工数・担当を管理する基盤資料WBSの作成計画作業範囲を明確化し、進捗・工数・担当を管理する基盤とする
フォルダ構成・命名規則全工程ドキュメント・ソース・設定ファイルなどの配置ルール品質マネジメント/プロジェクト知識のマネジメント実行成果物の保管場所や命名規則を統一し、検索性・保守性を向上させる
各種連絡先一覧全工程プロジェクト関係者、利用部門、ベンダー、保守担当などの連絡先一覧ステークホルダーの特定/コミュニケーション・マネジメントの計画立上げ・計画関係者との迅速な連絡・情報共有・エスカレーションを可能にする

💡 基本設計で重要なポイント

基本設計では、単に設計書を作成するだけではありません。

次の工程である詳細設計・コーディング・テストに必要な情報を、関係者が同じ認識で理解できる状態にすることが重要です。

特に、以下の観点を明確にします。

  • システムが提供する機能
  • 画面・帳票など利用者から見える仕様
  • 外部システムとの連携
  • データの構造と関係
  • システム・サブシステムの構成
  • ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク構成
  • 性能・可用性・セキュリティなどの品質条件

📌 基本設計と詳細設計の境界

基本設計と詳細設計の区分は、会社やプロジェクトの開発標準によって異なります。

例えば、次の成果物は基本設計で初版を作成し、詳細設計で詳細化するケースがあります。

  • 画面仕様書
  • 帳票仕様書
  • データ定義書
  • コード定義書
  • 外部IF仕様書

そのため、本表では一部を**「基本設計・詳細設計」**と表記しています。

重要なのは工程名そのものではなく、

どの工程で初版を作成し、どの工程で内容を確定させるか

をプロジェクト計画や開発標準で明確にしておくことです。


✨ まとめ

基本設計は、要件定義で整理した要求を、実現可能なシステム仕様へ変換する工程です。

PMBOK第6版の観点では、主に次のプロセスと関係します。

  • プロジェクト作業の指揮・マネジメント
  • 品質マネジメント
  • スコープの定義
  • 要求事項の収集
  • アクティビティ資源の見積り
  • 資源の獲得
  • 資源のコントロール
  • リスクの監視

基本設計の品質が低い場合、詳細設計・コーディング・テストで仕様確認や手戻りが多く発生します。

基本設計は、要件を「作れる仕様」へ変換し、その後の工程を安定させる重要な工程です。

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