PMBOK第6版とシステム開発工程の関係を理解する⑤
~【各テスト】成果物・システム開発工程・PMBOKプロセス対応表~
📘 単体テスト・結合テスト・総合テスト・受入テストで作成する成果物
システム開発のテスト工程では、単にプログラムを動かして不具合を検出するだけではありません。
各テスト工程において、
- 何を確認するのか
- どの条件で合格とするのか
- どのような手順で実施するのか
- 実施結果をどのように証明するのか
を成果物として残す必要があります。
PMBOK第6版では、「単体テスト」「結合テスト」などの開発工程自体は定義されていません。テスト仕様書の作成やテスト実施は、主に品質マネジメントおよびプロジェクト作業の指揮・マネジメント、結果確認は品質コントロールと関係します。
なお、スコープの妥当性確認は、主に顧客や利用部門が成果物を正式に受け入れる場面に関係するため、単体テストや結合テストよりも、受入テストとの関連が強いプロセスです。
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① 単体テスト
単体テストでは、プログラムやモジュールなどの最小単位について、詳細設計やプログラム仕様どおりに動作することを確認します。
主に、開発担当者が実施します。
📋 単体テストで作成する成果物
| ドキュメント(成果物) | システム開発工程 | 内容 | 主に関連するPMBOK第6版プロセス | プロセス群 | 主な目的 |
|---|---|---|---|---|---|
| 単体テスト仕様書 | 単体テスト | モジュール単位のテストケース、入力値、期待結果、実施手順、合否基準を記載した資料 | プロジェクト作業の指揮・マネジメント/品質マネジメント | 実行 | モジュールが詳細設計・プログラム仕様および品質基準を満たすか確認する |
| 単体テストエビデンス | 単体テスト | テスト結果、実行ログ、画面ハードコピー、出力ファイル、DB確認結果など | 品質コントロール | 監視・コントロール | テストが手順どおり実施され、期待結果を満たしたことを証明する |
💡 単体テストの主な確認対象
- 正常系処理
- 異常系処理
- 境界値
- 入力チェック
- 計算結果
- DB登録・更新結果
- エラーメッセージ
- 例外処理
単体テストでは、プログラム単体の不具合を後工程へ持ち越さないことが重要です。
② 結合テスト
結合テストでは、複数のプログラムやモジュール、画面、バッチ、データベース、外部インターフェースを組み合わせ、連携が正しく行われることを確認します。
📋 結合テストで作成する成果物
| ドキュメント(成果物) | システム開発工程 | 内容 | 主に関連するPMBOK第6版プロセス | プロセス群 | 主な目的 |
|---|---|---|---|---|---|
| 結合テスト仕様書 | 結合テスト | 機能間・モジュール間・外部インターフェース間のテストケース、実施手順、期待結果を記載した資料 | プロジェクト作業の指揮・マネジメント/品質マネジメント | 実行 | モジュール間の連携および基本設計で定めた機能・インターフェースが正しく動作するか確認する |
| 結合テストエビデンス | 結合テスト | 結合テストの実行結果、ログ、画面ハードコピー、送受信データ、DB確認結果など | 品質コントロール | 監視・コントロール | 結合テストが正しく実施され、機能間連携が期待結果を満たしたことを証明する |
💡 結合テストの主な確認対象
- 画面間連携
- プログラム間連携
- DB更新と参照
- オンラインとバッチの連携
- 外部システムとのインターフェース
- ファイル送受信
- ジョブ間の連携
- 異常発生時の処理連携
結合テストでは、単体では正常でも、組み合わせたときに発生する不整合を検出します。
③ 総合テスト
総合テストでは、システム全体を本番に近い環境で動かし、要件定義や基本設計で定めた機能・性能・運用条件を満たしていることを確認します。
📋 総合テストで作成する成果物
| ドキュメント(成果物) | システム開発工程 | 内容 | 主に関連するPMBOK第6版プロセス | プロセス群 | 主な目的 |
|---|---|---|---|---|---|
| 総合テスト仕様書 | 総合テスト | システム全体のテスト方針、テストケース、実施手順、期待結果、合否基準を記載した資料 | プロジェクト作業の指揮・マネジメント/品質マネジメント | 実行 | システム全体が要件・基本設計・品質基準を満たすか検証する |
| 総合テストエビデンス | 総合テスト | 総合テストの実行結果、画面ハードコピー、ログ、帳票、ファイル、性能測定結果など | 品質コントロール | 監視・コントロール | 総合テストが正しく実施され、システム全体が期待結果を満たしたことを証明する |
| 運用設計書 | 総合テスト | 監視、バックアップ、ジョブ、障害対応、セキュリティ、運用体制などの方針を整理した資料 | プロジェクト作業の指揮・マネジメント/品質マネジメント/リスク対応の計画 | 計画・実行 | 本番運用に必要な方式を設計し、総合テスト中に実現性を確認してリリース前に確定する |
💡 総合テストの主な確認対象
- 業務シナリオ
- システム全体の機能
- 性能・応答時間
- 大量データ処理
- セキュリティ
- 障害回復
- バックアップ・リストア
- ジョブ運用
- 他システムとの連携
- 本番相当環境での動作
総合テストでは、個別機能だけではなく、システム全体として業務を遂行できるかを確認します。
④ 受入テスト
受入テストでは、利用部門や顧客が、完成したシステムが業務要件や受入基準を満たしていることを確認します。
開発側の品質確認だけではなく、利用者による正式な受入判断が中心となります。
📋 受入テストで作成する成果物
| ドキュメント(成果物) | システム開発工程 | 内容 | 主に関連するPMBOK第6版プロセス | プロセス群 | 主な目的 |
|---|---|---|---|---|---|
| 受入テスト計画書・仕様書 | 受入テスト | 業務シナリオ、受入条件、テストケース、実施体制、判定方法を記載した資料 | スコープの妥当性確認/ステークホルダー・エンゲージメントのマネジメント/品質マネジメント | 実行・監視・コントロール | 利用部門が業務要件と受入基準を満たしているか確認できるようにする |
| 受入テスト結果・エビデンス | 受入テスト | 利用部門による実施結果、画面ハードコピー、帳票、承認記録、未解決事項など | スコープの妥当性確認/品質コントロール/ステークホルダー・エンゲージメントの監視 | 監視・コントロール | 顧客・利用部門が成果物を確認し、正式に受け入れるための根拠とする |
| 操作マニュアル | 受入テスト・リリース | 利用者向けに画面操作、入力方法、エラー対応などを分かりやすく記載した資料 | 品質マネジメント/ステークホルダー・エンゲージメントのマネジメント | 実行 | 利用者がシステムを正しく操作できるようにし、受入テストや利用者教育で内容を確認する |
💡 受入テストの主な確認対象
- 業務要件を満たしているか
- 実際の業務手順で利用できるか
- 操作性に問題がないか
- 帳票や画面が業務上適切か
- 権限が正しいか
- 運用開始可能な状態か
- 残課題が受入可能な範囲か
- 受入基準を満たしているか
受入テストで重要なのは、単なる不具合確認ではなく、業務部門が「このシステムを受け入れて利用できる」と判断することです。
📊 4つのテスト工程の違い
| テスト工程 | 主な確認対象 | 主な実施者 | PMBOK第6版で特に関連するプロセス |
|---|---|---|---|
| 単体テスト | プログラム・モジュール単位 | 開発担当者 | 品質マネジメント/品質コントロール |
| 結合テスト | 機能・モジュール・IF間連携 | 開発・テスト担当者 | 品質マネジメント/品質コントロール |
| 総合テスト | システム全体・性能・運用 | テストチーム・開発側 | 品質マネジメント/品質コントロール |
| 受入テスト | 業務要件・受入基準 | 顧客・利用部門 | スコープの妥当性確認/ステークホルダー・エンゲージメントの監視 |
📋 全工程で作成・管理する成果物
| ドキュメント(成果物) | システム開発工程 | 内容 | 主に関連するPMBOK第6版プロセス | プロセス群 | 主な目的 |
|---|---|---|---|---|---|
| 不具合管理表 | 全工程 | 発生した不具合の内容、原因、影響、対応状況、対応履歴を管理する資料 | 品質コントロール/リスクの監視 | 監視・コントロール | 不具合を一元管理し、品質向上と再発防止を図る |
| 課題管理表 | 全工程 | プロジェクト課題、担当者、期限、対応状況、解決履歴を管理する資料 | プロジェクト作業の監視・コントロール/リスクの監視 | 監視・コントロール | 課題を可視化し、対応漏れや遅延を防止する |
| 進捗管理表 | 全工程 | WBSやスケジュールを基に進捗率、実績、遅延状況を管理する資料 | プロジェクト作業の監視・コントロール/スケジュール・コントロール | 監視・コントロール | プロジェクトの進捗を把握し、計画との差異を管理する |
| WBS(Work Breakdown Structure) | 全工程 | 作業を階層的に分解した一覧。進捗・工数・担当を管理する基盤資料 | WBSの作成 | 計画 | 作業範囲を明確化し、進捗・工数・担当を管理する基盤とする |
| フォルダ構成・命名規則 | 全工程 | ドキュメント・ソース・設定ファイルなどの配置ルール | 品質マネジメント/プロジェクト知識のマネジメント | 実行 | 成果物の保管場所や命名規則を統一し、検索性・保守性を向上させる |
| 各種連絡先一覧 | 全工程 | プロジェクト関係者、利用部門、ベンダー、保守担当などの連絡先一覧 | ステークホルダーの特定/コミュニケーション・マネジメントの計画 | 立上げ・計画 | 関係者との迅速な連絡・情報共有・エスカレーションを可能にする |
📌 PMBOKとの対応で注意すべき点
PMBOK第6版は、テスト仕様書やエビデンスなどの成果物を直接規定しているわけではありません。
本表は、各成果物の作成・実施・確認に対して、主に関係するプロジェクトマネジメントプロセスを実務上の観点から対応付けたものです。
特に、次の区別が重要です。
- 品質マネジメント
品質を成果物やプロセスへ作り込む活動 - 品質コントロール
テストやレビューによって、成果物が品質基準を満たしているか確認する活動 - スコープの妥当性確認
顧客やスポンサーが、完成した成果物を正式に受け入れる活動
したがって、単体テスト・結合テスト・総合テストのエビデンスは、主に品質コントロールと関連します。
一方、受入テスト結果や顧客承認は、スコープの妥当性確認との関連が強くなります。
✨ まとめ
テスト工程は、すべて同じ目的で実施するものではありません。
- 単体テスト:個々のプログラムが正しく動くか
- 結合テスト:複数機能が正しく連携するか
- 総合テスト:システム全体が要件・品質基準を満たすか
- 受入テスト:利用部門が業務で利用でき、正式に受け入れられるか
という違いがあります。
PMBOK第6版の観点では、テストの計画・仕様作成・実施・結果確認・正式受入を、それぞれ適切なマネジメントプロセスによって管理することが重要です。
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【書籍購入紹介(AMAZON)】
PMBOK第6版を購入したい場合は→ プロジェクトマネジメント知識体系ガイド PMBOKガイド 第6版(日本語)
第6版の補足資料として、この辺も見てみるとわかりやすいかと思います。→図解即戦力 PMBOK第6版の知識と手法がこれ1冊でしっかりわかる教科書
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PMBOK第7版を購入したい場合は→ プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第7版
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